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化学肥料を使わず植物ホルモンの力を活かした農法

農業を生業(なりわい)とし、暮らしの糧としている私達にとって、「作物が何によって生長しているのか」という前提をおさえておくことは大命題と言えます。基本中の基本とでも言いますか・・・。

 化学肥料で起こる身体への害とは?

これが就農当初の16年前は「肥料」だったわけです。

野菜や果物が成長するためには肥料が必要だから、なるべく身体によい作物を収穫する為に有機肥料や堆肥を吟味して、肥料にこだわっていかなければ、良いものは収穫できないと考えていました。

化学肥料を使うと作物の中に硝酸態窒素が蓄積されて、メトヘモグロビン血症や発がん物質が身体にできやすくなってしまうという文献を読み、であるなら有機肥料を使わなければとなっていました。

 有機肥料で虫食いがひどくなる

鶏糞や牛糞堆肥を肥料として畑に撒いて作物を栽培してみても、虫食いは無くならないし果樹園でも防除(農薬散布)を減らすと病気・害虫が多発してしまう状態が続いていました。

体験の中から「肥料の多いところほど虫食いがひどくなる」現象が見て取れるので、なるべく肥料は少な目にとやっていると、だんだんりんごは小さくなっていくし、木も弱ってしまう。

収穫量も少なくなるけれど、食べてくれる人の役に立つ作物を作るならその方がいいと、反収の少なさを受け入れて営農してきたのが実情だったと思います。

 7年前に炭素分(木質チップや枯草、わら、もみ殻など)を微生物(キノコ菌)が分解し作物の養分として循環する畑の事を聞いてから(たんじゅん農)風向きが変わりました。

「施肥」する限り、化学肥料・有機肥料も本質的には「肥料で育てる」ことには変わりがなかったようなのです。

腐りにくい野菜

 以前にも書きましたが、炭素資材が微生物の働きで養分化してくると、人参畑でも家の野菜畑でも出来具合が全く別物に変化します。

何より味が良くなった。

そして腐りにくくなったというお客様の評価がとても多くなりました。

微生物(キノコ菌)が土の中に増える発酵過程で養分を作り、微生物と植物(の根)が共生している事で、作物たちが健全に育っていくことを体験することが出来たのです。

微生物の存在を無視して、肥料を雨や水に溶かしてどんどんと吸い上げさせる施肥栽培では、病気・害虫が多発していた実状に、納得せざるを得なかったのでした。

 

それでも果樹園ではとてもそこまでのレベルには行きません。

確かに味はよくなりましたし、病害虫もずいぶん軽くなりましたが、元気いっぱいの木で居てくれている雰囲気ではない。

収穫量がようやく人並。昨年のような大きな天候の変化に対応できない現状を見て「理に適うことをおさえられていれば、こんなものではないはず」という思いがありました。

 

減農薬栽培は植物ホルモンの理解から

 昨年9月にこの地域でまれに見る長雨と、道法さんの切上げ剪定講座がいっぺんにきました。

殺菌剤散布の少ない(当地標準30%以下)私たちのりんご園では褐斑病というカビが葉っぱに取りついて落葉してしまう病気が出て、りんごの玉伸びと熟度に影響が出ました。

そんな最中に、道法さんの切上げ剪定講座を聴きに行き、植物ホルモンの働きを理解して、それに合わせた枝つくりをすると、病害虫にも強いし、何より収穫量も品質(味)も納得いくものが収穫できるという説明を聞きました。

家に帰ってから、りんごの樹をよく見ると、長雨の中、病気で落葉してきた中にも、冬の剪定で上向きに残した枝と、上向きに新しく伸びた徒長枝(とちょうし)と呼ぶ若い枝には、まだしっかりと葉っぱが残っているのをみつけ、このことであったかとようやく理解が出来たのです。

そして11月には福島県の紺野さんという果樹農家さんの所で、切上げ剪定園を見に行き、ものすごい量の大玉りんごが成り下がる姿に圧倒されたのです。

 

植物ホルモンの力とは?

 植物には屈地性(くっちせい)という原則があり、枝が横向きに曲がると必ず上へ向かう新芽がでて、上へ伸びていく性質があります。

果樹園のりんごや桃の木に当てはめれば、徒長枝がこれに当ります。

そして新芽で作られるのが発根ホルモン(オーキシン)です。これが根っこまで降りてきて、盛んな発根を促します。

そして根っこで作られるのが「葉や茎を伸ばすホルモン」(ジベレリン)「蕾を作り花を咲かせるホルモン」(サイトカイニン)。

ですから元気のよい枝や葉を作り、良い花を咲かせ良い結実を得るには元気のよい根っこが絶対に必要で、そのためには新芽がたくさん出てくる元気のよい上向き枝が木にたくさんあることが一番理に適っている。

これを逆に言えば、剪定で枝を切り落とせば落とすほど、地下部の根っこが枯れていき、植物ホルモンの活性低下を招いていることになる。道法さんが何回もミカンの木を掘り返して確認してきたことだそうです。

また、エチレンと呼ばれるホルモンは若い葉で生成され植物内に蓄積されていきます。

これが「虫除け・殺菌のホルモン」役をしています(代謝の過程で酸化エチレンになり、強い殺菌力を持つ)エチレン活性の高い上向きの元気な枝についていた葉が、昨年の長雨にも負けず落ちなかった事実をこの目で見た私はここで膝を打ったのでした。

 そして果実の成熟を進める役割はアブシジン酸と前述のオーキシンが熟度・糖度を高めていく働きを担っている「美味しいホルモン」。これら全て「植物ホルモン」と呼ばれるいくつもの物質が

植物体内でアクセルとブレーキのバランスを絶妙に取りながら自動制御している。

植物を育てているのは何? 

植物を育てているのは肥料ではなかった。

もしかしたら発酵養分でないかもしれない。土壌微生物と共生しているのはそうだとしても、それですべてを言い表している訳ではない。

どうやら僕は大切なことを一つ忘れていたかもしれない。

植物が育つ「環境」をどう整えるか、微生物の住みやすい畑にするには何をすればよいかと、作物の周りの環境づくりに意識が集中していて、「作物そのもの」の生理生態」に踏み込めていなかったようなのです。

これを「木を見て森を見ず。森を見て木を見ず。」というのでしょうか。無知は愚かです。

でも自分が無知であることが分かっていれば、次のことを素直に吸収することが出来る。今はそんな気持ちで桃の木の剪定作業をみんなと一緒に進めています。(アキオ)

<2017年2月号ニュースレターより 無農薬のりんごづくりを目指して>

 

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おぐらやま農場 てるちゃん

おぐらやま農場 てるちゃん

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