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安曇野の地下水を巡って④ 2017年ニュースレター7月号より 無農薬のりんごづくりを目指して

3年前になりますが、平成26年10月に、「地下水で拓く安曇野の未来・~地下水は誰のもの!? 次世代に引き継ぐ<地下水資源の未来の姿>~」と題したシンポジウムが開催されました。また2年前の平成27年の夏には全国名水サミットが安曇野市で開催され、全国の「名水百選」の自治体関係者が集まって水資源環境の保全のためのシンポジウムを開催しています。行政主導でこのような機会がたびたび開催されるのですから、安曇野市行政を担う方たちも、この地域の将来に亘る繁栄・発展のカギは、地下水の保全にあることを十分承知していることが分かります。

 

今回は平成26年のシンポジウムで基調講演となった環境省の方のレジュメを参考に、地下水汚染の現状についての部分を抜き書きして皆さんに紹介したいと思います。

 

Contents

基調講演①「水循環基本法について」~健全な水循環の実現に向けて~

講師:袖野玲子氏 (環境省 水・大気環境局土壌環境課 地下水・地盤環境室室長補佐)

地下水の特徴①~水循環の一部を構成

*地下水流の機能として、水質浄化作用がある。多くの地層を通過し水が綺麗になっていく。

*雨水が地中に浸透し洪水の緩和に役に立っている。

*土壌中の水分がヒートアイランド現象といった気候の緩和につながり、また多くの生態系を維持している。

地下水の特徴~人々に親しまれる身近な水源

*水は古来より身近な水源として人々に親しまれている。

*湧水のあるところに人々が集まり井戸端会議をしたり、時には争いごとの種となり下流と上流の村と命がけの争いの歴史があるなど、地域の文化・生活に深い関わりがある。

■日本の水資源(使用量)(2011 年)

*農業用水に1番多く使われている。農業用水全体の1割が地下水で賄われている。

地下水の特徴~地下水利用のメリット

*簡便性/経済性、地下水脈が地下にある場所では容易に安価に良質な水が得られる。

*水量が安定している。

*良好な水質。安曇野でも美味しい水ということで水ブランドが確立している。

*恒温性。夏に冷たく冬に温かく水温が安定している。この特徴を利用した地下水の利用がある。

地下水の特徴~地下水汚染の特性

*汚染の影響が長期間継続する。河川の水と違って拡散や希釈があまりない。地下水は動きが穏やかでなかなか汚染が解消しないため、一旦汚染されると長期化する。

*汚染源の特定が困難である。地下水は地下にあるので見えない。特定するのに時間がかかる。汚染の浄化が技術的に困難、または多額の費用が掛かる。

■地下水質の現状【概況調査結果】

*日本の地下水の現状として、環境省の調査では、硝酸性窒素による汚染が最も多く、約4%の地点で環境基準を超過している。

*2番目に高いのが砒素である。全体の超過率は6%。

*概況調査では環境基準達成率は 97%。日本全国平均が 94%。

*66 地点中砒素が1地点、テトラクロロエチレンが1地点で環境基準を超過。

*一度基準を超過した井戸を継続的に監視している調査(継続監視調査)において 150 地点中、硝酸性窒素は63地点中39地点超過している。長野県においても硝酸性窒素が 課題。

■地下水汚染の汚染原因別件数(2012 年度)

*揮発性有機化合物(VOC)は、有機系溶剤のトリクロロエチレンを用いた洗浄などで使われている。工場・事業場からの汚染が殆どになる。

*重金属は砒素など土壌に含まれる自然由来の汚染が原因となっている。

*硝酸性窒素は、家畜排せつ物や畑への肥料のやり過ぎが汚染原因となっている。生活排水が適切に処理されていない場合も汚染原因となる。工場由来の汚染とは違う仕組みである。硝酸性窒素は面的な汚染源となることが多い。例えば、畑への施肥や家畜排せつ物を牧草地に撒くことで汚染源が面的に広がるため、対応が困難となる。

■地下水浄化等の対策の内容別件数(2012 年度)

*VOCは地下水を汲み揚げて処理したり、汚染土壌を掘削除去するといった対策がされている。重金属も同様の対策で処理されている。 硝酸性窒素は対策が困難である。

■地域の事例 熊本市

*熊本市は水道水源の 100%を地下水で賄っている。近年硝酸性窒素による汚染が問題になっている。

*詳細な調査が行われ、地域によって汚染源が異なることが把握された。家畜排泄物、畑や果樹園の施肥が原因で地域に応じた取組を行う必要がある。

*家畜排泄物を肥料として散布している例もあるが、排泄物を田畑に放置すると窒素が地下に浸透し地下水が汚染される。適正な管理をする必要がある。

■汚濁負荷削減(一人一人の取組)

*一般家庭で出来ること。生活排水の適正な処理、浄化槽の設置などがある。

*畜産業の方が取組むこと。排泄物の適正な管理、例えばバイオマスとしての有効利用が挙げられる。

*農家が取組むこと。施肥基準の遵守。施肥基準については農林水産省で適正な肥料量の基準を定めている。過剰な施肥の抑制を行っていただきたい。

田畑・果樹園に「施肥」することが地下水汚染の直接的な原因になっていることを、環境省の専門家が指摘しているこの事実を、私達農業者がどう受け止めていくかが問われています。「施肥基準の尊守」や「過剰な施肥の抑制」ではなく、「施肥の必要ない農業」が未来の農業になっていけるように。それは自然の摂理と共に生きようとする、おぐらやま農場の希いです。

https://ogurayamafarm.com/2017-5-468

https://ogurayamafarm.com/2017-6-483

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