長果枝は霜対策にも 切り上げ剪定だからこそ
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道法スタイルの剪定では立ち上がった
元気な長い枝を残して結果母枝にしていくことが特徴です。
「長果枝(ちょうかし)」と呼んでいます。
実はこれが遅霜対策の一つになってくれます。
花芽ホルモンのサイトカイニンの働きで、
長果枝先端(立ち枝の上側)の花芽から順番に充実し、
先端から順に開花してきます。
このタイムラグが「遅霜で花が全滅」しないための
自己防衛策になっています。
これが短果枝だとタイムラグが短く、
私の体験では短果枝の弱い花ほど凍霜害に弱いので、
被害が拡大しやすいようなのです。
果樹農家にとっては、
摘果作業時に沢山ある中から
形や大きさの良いものを選んでいくのが理想的ですが、
だからといって花芽が多いほど良いというものではありません。
開花・受粉の過程は木にかなりの負担がかかります。
人に例えれば妊娠と出産がその過程。
「一度に沢山咲かせて保険をかける」対策よりも、
「一つ一つが強い花を、時間差をつけて咲かせる」対策を狙う方が、
凍霜害時には結果的に良果を残せることになると思います。
もちろん冷込みキビシイ時は、
蕾のうちにダメージを受けることもありますから、
状況によっては防霜ファンや園地で火を焚いたり、
霜ガードなど保護剤を使用しなくてはならない
という局面もあります。
1枚目、梨の立ち枝開花。先端が早く、下ほど蕾が多い。
2枚目、梨は同じ蕾から10以上の花がでる。この中でもタイムラグが生まれリスク回避につながっている。
3枚目、蕾を手で開いてみると、凍害受けていない状況が確認できました。
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