「 グローバリズムの終焉 ~経済学的文明から地理学的文明へ~ 」 という思想史研究家の関曠野(せきひろの)さんと安曇野市穂高で有機農業をする藤沢雄一郎さんが共著の本を、読み返しました。
ほぼ毎日火を起こして部屋を暖めるこの営みが、なんとも言えない充実感に充ちていることを告白致します。火を焚くことで「ヒト」は「人間」となったという、我らの魂の奥底に眠る、生命の根源を思うのです。
今年一年の初めに、一冊の本を読みました。「旅とオーガニックと幸せと ~WWOOF農家とウーファーたち~ 」ウーフジャパン事務局の星野紀代子さんという方が著者です。
私たちのりんご畑は、無農薬栽培にはまだなりませんが、農薬使用量を当地標準3割以下に抑えた低農薬栽培に取り組んでいます。石灰硫黄合剤・ボルドー液(石灰+銅)など、天然鉱物原料などの理由で「化学農薬にカウントされない」有機JAS認証資材も使いますので化学合成農薬の使用割合はさらに下がります。
農業者である私たちが、地下水保全のために取り組んでいくことの柱は、まず何を置いても窒素肥料をやめる、もしくは使う量を減らす栽培に切り替えていくこと。「硝酸態窒素」が多量に含まれる化学肥料や畜産堆肥などの多施肥栽培が、収量維持していくためのこれまでの常識ですが、地下水を汚す原因としてまだまだ認知されていない、されていても危機感が薄いというのが、現状ではないでしょうか。
水田が地下水の涵養に大きな役割を果たしている事を市民で共有して、お米の生産と消費に取り組んでいるとの事。そして、田んぼも含め農地で今まで当たり前のように使われていたチッソ肥料が地下水を汚染してしまう主原因であるという現実が浮かび上がってきています。
おぐらやま農場を一緒に支えてくれている農場スタッフさんの皆さんに、日常の現場の体験をフェイスブックに投稿してもらえませんかとお願いしたら、皆さん快諾してくれました。日ごろは農作業段取りを打ち合わせて、常時3~4人ほど滞在してくれているウーファーさんと組んでもらって、毎日農作業を進めてくれているみなさん。担当している部分については私よりも長い時間関わってくれているし、その都度様子を報告してくれたり、問題解決を一緒に考えてくれる、信頼できる方たちばかりです。なぜかそういう人たちがスタッフになってくれる農場。人生の巡り合わせの不思議に感謝します。
3年前になりますが、平成26年10月に、「地下水で拓く安曇野の未来・~地下水は誰のもの!? 次世代に引き継ぐ<地下水資源の未来の姿>~」と題したシンポジウムが開催されました。また2年前の平成27年の夏には全国名水サミットが安曇野市で開催され、全国の「名水百選」の自治体関係者が集まって水資源環境の保全のためのシンポジウムを開催しています。行政主導でこのような機会がたびたび開催されるのですから、安曇野市行政を担う方たちも、この地域の将来に亘る繁栄・発展のカギは、地下水の保全にあることを十分承知していることが分かります。
これで農地への肥料が必要なくなるのだとしたら、安曇野の地下水を保全していくための光明が見えてきます。肥料由来のチッソ成分が硝酸態チッソ成分として地下水へ入り込み、水質低下が懸念されているのが実情の安曇野の地下水。私達農業者が掲げなければならないビジョンは、美味しくて品質の良い農産物がたくさん収穫できる、肥料を使わないで植物ホルモンを生かす農業の実現が、同時に安曇野の地下水を護っていくという未来設計図ではないでしょうか。
安曇野市は合併前は三郷村・堀金村・穂高町・明科町・豊科町の5町村があったので、全ての旧町村の「美味しい水」にまつわるスポットを目指して出発です。 ・・・・(中略)・・・ 安曇野の水を守りたい。このテーマに農業者の私達が直面する課題は、「肥料」と「農薬」をどう扱うかです。これらはセットで考えられるものです。ずばりの本命・本丸へ直球勝負で取り組んでいきたいと思います。