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僕の生まれ育った歌と息子の旅立ちに向けて 4月7日

田舎暮らしの楽しみ  

時には昔の話を・・・。
ちょっと長いけど暇な時に読んでくれたら嬉しいです。

高石ともやとザ・ナターシャーセブンという
フォークグループが昔ありました。

年譜を見ると
活動していた時期は1971年〜なので
1970年生まれの僕は生まれたばかりの頃。

母はナターシャーセブンが大好きで、
録音したカセットテープを毎日かけてくれて、
まだ僕が3〜4才ぐらいの時から、
2つ年下の妹とも、いつも一緒に歌ってくれたものです。

アメリカンオールドやブルーグラス曲に歌詞をつけた
「陽のあたる道」や「わたしを待つ人がいる」
「私に人生と言えるものがあるなら」、

ナターシャーの盟友・笠木透さんが作った珠玉の名曲
「父さんの子守唄」「わが大地のうた」、

ナターシャオリジナルやアレンジの
「谷間の虹」「丘の上の校舎」「想い出の赤いヤッケ」etc…。

幼少期に母と妹と一緒に歌った歌は
もうDNAに刻まれているようなものです。

ナターシャーセブンが編集・出版した107ソングブックは
タイトル通り107曲の楽譜と歌詞を掲載した分厚い歌集なのですが、

これが僕と文字の出会い。そして人生の教科書になっていく訳です。

母は4才の僕がスラスラ歌えるように、
お気に入り曲のページに全部ふりがなをつけてくれたので、
毎日毎日繰り返し歌っていたら
小学校に上がる前からひとりでに
ひらがなも漢字もバッチリ読めるようになっていました。

勉強したという自覚のないままに。
母はこれを狙ってやっていたのでしょうか?

活字を見るとワクワクする脊髄反射は
きっとこの頃に培われた可能性大で、
その結果本を読むのが大好きな少年が、
また一人生まれた訳です。

107曲のうち半分以上はスラスラ歌っていたような気がします。
盛りすぎかなあ?

ふさこさんのコメントで真偽の程を判定しましょう。

親の離婚や再婚、引越しを繰り返した我が家の激動の時代の中で、
107ソングブックはいつのまにか母や私の手元?
からなくなってしまっていましたが、

何度かのテープダビングで
かろうじて聞こえるナターシャの歌声は
ずっと僕の心の支えだったと思う。

生きている鳥たちが
生きて飛びまわる空を
あなたに残しておいて
やれるだろうか父さんは
目を閉じてごらんなさい
山が見えるでしょう
近づいてごらんなさい
こぶしの花があるでしょう
(私の子どもたちへ 〜父さんの子守唄〜)

こぶしの花がきれいだねと言った先生の言葉に、
あぁ、これがずっと歌ってたこぶしの花なんだと
涙ぐんでしまう小学生ってちょっと変だよね。

中学2年の時に、尼崎に住んでいた同級のツヨシ君と友達になった。
好きな歌は何なん、えっ、ナターシャ知ってんの!

学校で浮いてまうやろ。誰もそんな歌知らんもんな。

なんと彼はもうすでにギターが弾けた。

孤独のマラソンランナーという結構難しいハイコードの歌も
軽やかに押さえながら歌う彼。

おまけに中学出る頃には、
城田ジュンジのようにバンジョーも弾きこなしていた。

負けてたまるかと一生懸命ギターコードを押さえる練習して、
下手っぴながらかき鳴らせるようになったのは
中学3年の終わりぐらいだったかなあ。

学校出てからは全国の牧場や農場を転々としながら
月日は流れて、
てるみさんと一緒に安曇野で果樹園をはじめていた僕たちの家に、
ツヨシ君から電話がかかってきたのはもう10年以上前の早春の日、
夜の9時半頃だったかな、子どもたちはもう寝てた記憶があるから。

相変わらずの関西なまり。ツヨシ君の懐かしい声で、
「アキオ君、元気にしてるか。久しぶりやなあ。安曇野にいるんやって」

なんでも、大阪の古本屋に入ったら
たまたまナターシャーセブンの107ソングブックを見つけてな、
これはチャンスやとすぐに買ってきたんや。

それでアキオ君のこと思い出してな。そっちにあるか?

あぁ、無いんやったら完全コピーして送るわ。
裏表紙がちぎられてしまってるけど、
背表紙はテープで補強してあるし、
まだしっかりしてるよ。
またギターとバンジョーで歌いたいなあ」

2〜3日して届いた分厚いコピーの束を封筒から出して、
パラパラめくった瞬間、顔から血の気が引く。

忘れもしない母の字でふりがなを振りまくってあるあの本。
見間違うはずがないあの本。

僕に文字も人生も教えてくれたあのソングブック。
30数年の時を越えて目の前にあらわれる。

その晩ツヨシ君に電話したら、
「それはすごい話なやあ。ひと頃は結構人気あったから何千部、
ひょっとしたら万単位出てる本やで。
すごい確率引き当てたなあ。
そういうことなら、原本そっちに送るわ。
これはアキオ君が持ってなくちゃあかんわな」

そういってくれる彼の性格も重々わかる。
ホントにありがとう。母もビックリしてた。
そんなことがホントに起こるんだねと。

ちなみに裏表紙が引きちぎられていた理由を母はすぐに解説してくれて。
「裏表紙のウラのところに、子どもたちと一緒に歌が歌えて幸せよ、
大好きよってラブレターみたいにデカデカ書いちゃったのよ。
きっと古本屋へ持っていった人かお店の人が、
これじゃ売れないって破いたんだろうね」

そう言われてそのページのことも思い出したよ。
たしか赤の色鉛筆で書いてなかったっけ?

親バカ炸裂しているあのページを読んで、
子ども心に嬉しくなってたなあという感情も蘇ってきた。

そしてまた月日は流れて。19になった長男の風和がね、
一度東京へ出て仕事してみたいんだって、
高校卒業前から言ってたんだけど、

丸腰で戦場に出てもイチコロでやられるだけだから、
まずは少しづつスキルアップと実績作りを目指そうって事で、
家の仕事を手伝いながら動画作りの仕事も並行して自分で実践してきてね。

1年間、彼なりにあちこちから仕事をもらって、
だんだん役に立てるようになってきて。
そこについてはホントに彼自身の力で少しずつ切り拓いていく道。

生活費ぐらいならなんとかなりそうと、
手応えもつかめてきた最近。

ソロソロいい頃だねということで、
一昨日と昨日で自分で東京へ行き、家を下見してきたのです。

いよいよ迫る我が子の巣立ち。
こういう事の一つ一つが、
私たちに親の階段を一歩一歩と昇らせてくれているのです。

107ソングブックから1曲選んで彼に歌うとすれば何をうたう?

僕ならもちろん「青春の歌 〜さよなら〜」

さよなら僕の生まれた町
僕を育ててくれた町
今は僕も大人になって
町に別れを告げる
めぐる季節 流れるとき
人生のそれぞれに
終わりがあり はじめがある
そして別れがある

——-
3日前に、私たち家族と、
丁度私の妹と甥っ子姪っ子が来てくれていた我が家で、
歌ってみました。

こうして時は流れ、季節は巡り、人生が積み重ねられていきます。

長い呟きになってしまったのに、
最後まで付き合ってくれて本当にありがとうございました。

たまには昔の話。おしまいです。

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