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安曇野の地下水を巡って ② 2017年5月号ニュースレターより 無農薬のりんごづくりを目指して

ゴールデンウィーク直前。「みんなでどこかへ出かけようよ」と中1になったわらちゃんが言います。彼女は吹奏楽部に入部希望なのですが、三郷中吹奏楽部の練習の厳しさは有名で、だからこそやりがいがあって楽しいと、やる気の子ども達がその気で入部してくるそうです。そして顧問の先生から「一年生もゴールデンウィークが終わったら土日も練習日が続くから、今のうちにハワイでもどこへでも行ってきなさい」と言われたのだとか・・。

北ルプスの麓です。

 

「パスポートも用意してないし、すぐにハワイは無理だけど、どうしようか」と家族会議をして行き先を考えてみましたが、「よし、安曇野1周旅行なんてどうだい。遠い場所もいいけれど、安曇野にも知らない場所がまだまだあるはずだから、一日かけて市内をドライブして、旅のテーマは「美味しい水を探して」とか面白そうじゃない?」と、安易で安上がりな父親の提案に、ちゃんとその気になってくれる優しい妻と子ども達・・。

 

安曇野市は合併前は三郷村・堀金村・穂高町・明科町・豊科町の5町村があったので、全ての旧町村の「美味しい水」にまつわるスポットを目指して出発です。三郷はなんといっても黒沢の滝。私たちが暮らしている家の近くを流れる黒沢川の源流を遡っていきます。子ども達は厳冬期の凍りついた滝(これも絶景ではありますが)までのハイキングは何度も経験していますが初夏のこの季節は初めて。水しぶきをあげる滝の流れにコップを差し出して、雪解けの冷たい水をごくごくと飲ませてもらいます。山の香りが水に溶けているよう。

黒沢の滝。マイナスイオンたっぷりです。

 

堀金は常念岳登山口を目指して登っていく途中に「延命水(えんめいすい)」と名付けられた大きな岩の塊から滲みだしてくる水場へ行きました。北アルプスの山々の雪化粧がだんだん溶けていきますがそれが山の地面に入りこみ、こんな大きな岩から滲み出し流れ出してくるのです。黒沢の滝の水とはまた味がちがい、ほのかな甘味が感じられます。

延命水。コーヒー好きのひとがわざわざ水を汲んでいる場所です。

 

その後、穂高の大王わさび農場を目指しますが、現場近くはゴールデンウィーク大渋滞となっており、捲き込まれないうちに行き先変更。豊科にある「安曇野わさび田湧水群公園」という、地下水の湧き出す周辺を散策できる公園にした場所があります。黒沢の滝や延命水のある北アルプスを地元の人は「西山」と言いますがここら辺りは「がれ地」(石が多く耕土が少ない)が多く、川の水も畑に降る雨もどんどん浸透し地下水となり、標高の低い安曇平の東側で湧水となって湧き出します。年間通してほぼ13度前後の水温がわさび栽培やニジマス養殖などの産業を発展させてきました。

 

湧水公園のすぐ北側には、「安曇野の里」と呼ぶ観光施設(宿泊・農産物直売・レストラン・田淵行雄記念館等々)がありますが、ここにも「安曇野の里湧水」を飲んだり汲めたり出来るようになっていて、ここでもコップでごくごく飲みます。これは安曇平の西から東まで地面に潜って土に磨かれてきた水。これも美味しい。味にまるみがあるといいますか・・。

安曇野わさび田湧水群。水が透き通っています。

 

午後3時、穂高神社の鳥居すぐ下にある手打ちそばの名店「とりい」さんで一休み。元ウーファーさんのいづみさんがゴールデンウィーク期間だけ、蕎麦打ち修行をさせてもらっており、店主に御挨拶もかねて。蕎麦もちとおしるこをみんなでいただきました。(店を切り盛りする中村さん夫婦が提供してくれる手打ち蕎麦は本当に素晴らしいです。ぜひお試しください。) 穂高神社は日本アルプス総鎮守のお社。御祭神はいくつかありますが、調べてみると山の神様・海の神様・農業の神様・太陽の神様などとなっております。先人たちが自然と共に生きてきた歴史。それはどんな暮らし方や考え方だったのでしょう。

穂高神社 とりいさんの前で

最後に明科方面へ。長峰荘の温泉でゆっくりと浸かり、暮れなずむ夕暮れの安曇野を一望しようと長峰山山頂まで登ります。何度来てもここからの北アルプスを真正面にみる景色は絶景です。安曇平一面の田んぼには水が張られて夕暮れの光がキラキラと反射しています。面積としては平野部のかなりの比重を占める水田に張られる大量の農業用水が安曇野の地下水を涵養していることはここからの景色を見ればすぐに理解できますわさび田湧水の量が近年減少している事は転作で麦・大豆などの作付が増えたり住宅に転用されたりして、水を張らない土地が増えたことと因果関係があると言われています。そしてその姿が全て眼前に広がっています。

 

さてハワイへは行けなかった私達ですが、安曇野には「ハワイ」をテーマにした場所が1つあります。豊科南穂高の国道147号線沿いにあるレストラン「アヌエヌエ」(ハワイ語で「虹」)は1年半ほど前に店長さんと知り合いになり、何度か食事する機会があったのですが、この日は初めて家族みんなでハワイ料理の晩御飯となりました。スタッフのまさこさんも実は元おぐらやまウーファーさん。オープンしてまだ2年ほどのお店ですが様々なハワイ料理・ハンバーガー・パンケーキが美味しいと評判です。「ハワイアンスピリッツと安曇野の融合」をテーマに掲げて新鮮な地元野菜を使った料理も充実。それは根っこの部分でとても共感できるテーマだと感じます。皆さんも機会があればぜひ一度お立ち寄り下さい。

 

子ども達もだんだん大きくなり、学校や部活が忙しくなってきて、これからはみんなで出かけられる機会もそう多くないと思いますが、貴重な1日を使って自分たちが暮らすこの安曇野という場所をゆっくりと眺め、感じられたいい休日になりました。そして安曇野に暮らすということはきれいで美味しい水を享受できるという反面、その自然環境を未来につないでいく責任を負っているということを強く感じた1日でした。

 

安曇野の水を守りたい。このテーマに農業者の私達が直面する課題は、「肥料」と「農薬」をどう扱うかです。これらはセットで考えられるものです。ずばりの本命・本丸へ直球勝負で取り組んでいきたいと思います。(アキオ)

 

信州安曇野 おぐらやま農場について

 

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